身体と性③

渡辺京二の『逝きし世の面影』

 江戸時代の末期から明治時代の初期にかけて日本を訪れ、

 世界に類を見ない日本の精神文明を体験した欧米人の手記や書簡を掲載している本。


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引き続き、第八章 裸体と性 より引用。

 「日本のもう一つの国家的制度、すなわち悪名高き家の政府による規制と、規則的に行われる免許と放蕩者の通う場所の管理からもたらされる公的収入については、ちょっとばかり触れるにとどめる。顔立ちのよい女性は堕落した両親によって売られ、幼い頃から恥辱の生活にゆだねられる。奉公の期限が満ちると、日本の中流階級と結婚することも稀ではない。男たちはこういう施設から妻を選ぶことを恥とは思っていないのだ」。p268

 パンペリーにとっては「日本は矛盾に充ちた国」だった。なぜなら「婦女子の貞操観念が、他のどの国より高く、西欧のいくつかの国々より高い水準にあることは、かなり確かである」のに、「自分たちの娘を公娼宿に売る親たちを見かけるし、それはかなりの範囲にわたっている」からである。p268

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 妓楼の太夫はヨーロッパ的概念での売春婦ではないというのは、カッテンディーゲの観察でもあった。なぜなら彼女らは、祭礼中寺参りを認められていることでもわかるように、「社会の除け者扱い」を受けておらず、年季を勤め上げれば家庭に入ることもできたからである。p269

 ポンぺは遊女は二十五歳になると「尊敬すべき婦人としてもとの社会に復帰する」と言っている。「彼女らが恵まれた結婚をすることも珍しくはない」。遊女屋は「公認され公開されたものであるから」、遊女は社会の軽蔑の対象にはならない。「日本人は夫婦以外のルーズな性行為を悪事とは思っていない」上に、彼女らは貧しい親を救うために子どもの頃売られたのである。「子供は両親の家を後にして喜んで出て行く。おいしいものが食べられ美しい着物が着られ、楽しい生活ができる寮制の学校にでも入るような気持で遊女屋に行く」。p269

 「この親子はいわば自分たちを運命の犠牲者と考えているのである。良心は遊女屋に自分の子を訪問し、逆に娘たちは外出日に両親のいう住居に行くのを最上の楽しみにしている。娘が病気にかかると、母親はすぐに看護に来て彼女を慰める」。p269

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 「幕府が売春を保護しており、社会もまたそれを恥と思っていない」p270

 「わたしがたしかめたかぎりでは、この売春の形態といい、また政府がこのような制度を公認するやり方といい、この制度には、それほど特別に注目するにあたいするような変わったことや特徴的なものはない。法律はそのための施設の維持を認めているし(これはあるキリスト教徒の国々と同様である)、契約の当事者双方を保護している。不幸な犠牲者たちは、一般に幼少のことからその職業につくべく育てられ、この人びとはなんの自由意思もないことを一般の人びとは十分に認めている。そのために、法律の定めるとおりに一定の期間の苦役がすんで自由の身になると、彼女らは消すことのできぬ烙印が押されるようなこともなく、したがって結婚もできるし、そしてまた実際にしばしば結婚するらしい」。p271

 当時の日本人が「婚姻生活と家庭生活の神聖さ」などという、ブルジョワ的な観念を知らず、売春を西欧的な意味での悪とは認めていなかったことに対して、オールコックが判断を保留したのは、いかにも彼らしい聡明さというものだった。つまり彼は、それに対して強いて自身の倫理的基準を適用すれば、「正しい結論に到達することは完全に失敗するだろう」ようなひとつの文明と遭遇しているのだということを、正しく自覚していたのだ。p271

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 外国人たちがおどろいたのは、売春の悲惨さに対してではない。悲惨を伴うはずの、そして事実伴っている売春が、あたかも人性の自然な帰結とでもいうように、社会の中で肯定的な位置を与えられていることに、彼らはおどろいたのだった。p273

 買春はうしろ暗くも薄汚いものでもなかった。それと連動して売春もまた明るかったのである。性は生命のよみがえりと豊饒の儀式でもあった。まさしく売春はこの国では宗教と深い関連をもっていた。その関連をたどってゆけば、われわれは古代の幽暗に達するだろう。外国人観察者が見たのは近代的売春の概念によってけっして捉えることのない、性の古層の遺存だったというべきである。p276

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性に対する扱い?気持ちがだいぶ違った。

いや、まあ、本当に、今まで習ってきたもの、映画やドラマはなんだったんだ?!

 「正しい結論に到達することは完全に失敗するだろう」ようなひとつの文明と遭遇しているのだ

裸体、夫婦関係について…、なんだかもう新世界です!!

超ぶっ飛んでるような、すごく納得するような。。

続いては、第九章 女の位相です。

全十四章。あと少しで終わってしまう。かなしや。。




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