女の位相①

渡辺京二の『逝きし世の面影』

 江戸時代の末期から明治時代の初期にかけて日本を訪れ、

 世界に類を見ない日本の精神文明を体験した欧米人の手記や書簡を掲載している本。


つづいて、第九章 女の位相。

位相とは、
1.周期的に繰り返される現象の一周期のうち、ある特定の局面。
2.男女・職業・階級などの違いに応じた言葉の違い。

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~~以下引用~~

第九章 女の位相

 開国したこの国を訪れた異邦人の“発見”のひとつは、日本の女たちそれも未婚の娘たちの独特な魅力だった。ムスメという日本語はたちまち、英語となりフランス語となった。p283

 オイレンブルク一行は王子を訪ねたさい、染井の植木屋で休憩をとったが、ベルクによれば、「この庭園のもっとも美しい花」はその家の娘だった。「彼女は稀にみる品格と愛嬌のある女性で、われわれが来たときは、質素な不断着で園芸の仕事をしていたが、仕事をやめてわれわれにお茶を出してくれた。控え目でしかも親切な物腰に、われわれ一行はみな魅せられてしまった」と彼は記している。p283

 「私達にお茶を出した若い女の子は、私達が話しかけるといつも可愛らしく顔を赤らめるのであったが、この若い女の子にたちまち私達一行の中の若い人達は心を奪われ」、オイレンブルクは「彼等を発たせるのに非常に苦労」しなければならなかったのである。p283

 艦長ヴェルナーも「日本女性はすべてこぎれいでさっぱりしており、平均的にかわいらしいので、日本国土の全体に惚れこんでしまいそうだ」と感じた。p284

 「日本女性は男たちの醜さから程遠い。新鮮で色白、紅みを帯びた肌、豊かで黒い髪、愁いをふくんだ黒い瞳と生き生きした顔は、もう美人のそれである。・・・・・背は低いが体格はよく、首から肩、胸にかけての部分は彫刻家のモデルになれるほど。また手足の形がよく、びっくりするほど小さい。彼女たちを見ていると、愛欲過剰な日本の男の気持がわかり、寛容になってしまう」。p285

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 「正確に言えば、彼女たちはけっして美しくはない。顔だちの端正さという点では、まだ申し分ないとは言えないのである。頬骨が少し張り出しすぎているし、美しい大きな茶色の目も少々を切れ長すぎる。また厚ぼったい唇は繊細さに欠けているのだ」。「しかしこうしたことは何ら欠点にならない」。なぜなら「彼女たちは陽気で、純朴にして淑やか、生まれつき気品にあふれている」からだ。しかも「彼女らはきわめて人なつっこい」。p287

 娘の塗りたくりすぎと、妻たちの眉落とし、お歯黒とは、実は複合するひとつの現象だった。そのことを見抜いたのはスエンソンである。p290

 娘は自由気ままを満喫していて、その「優雅なる暇つぶしは、笑うこと、おしゃべり、お茶を飲むこと、煙草をふかすこと、化粧、それから、何度もある祭りに参加することである」。しかし、「結婚とともに束縛のない生活は終」る。「結婚するや否や女は妻の仕事、母の仕事に献身することになる」。p290

 すなわち、落とされた眉とお歯黒は「それまでの虚栄心と享楽好みを完全に捨て去ったことの目に見える証し」なのである。つまり、娘の塗りたくりやお歯黒は、ひとつの文明の中に生きている年齢階梯制の表現なのだった。p290

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 「日本の婦人の高い地位を示すもっともよいものは、彼女たちのもつ闊達な自由であり、それによって働き、また男性の仕事にまで加わることができることだろう」p293

 「これは東洋のほかの国々ではないことである。彼女たちの振舞はしとやかで控え目であるが、同時に天真爛漫でとらわれることなく、この点は平等の権利のあるものにおいてのみ見出せるものであろう」。p294

 「馬車なり人力車なりに乗るとき、夫が妻の先に立ち、道を歩くとき、妻は夫のすくなくとも四、五フィートあとに従う」p294

 「わが国では非常に一般的である夫人に対する謙譲と礼譲とが、ここでは目立って欠けている」p294

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 「下層階級においては、中流階級や上流階級におけるほど女性の服従が実行されたことはない」p296

 「農民の婦人や、職人や小商人の妻たちは、この国の貴婦人たちより多くの自由と比較的高い地位をもっている。下層階級では妻は夫と労働を共にするのみならず、夫の相談にもあずかる。妻が夫より利口な場合には、一家の財布を握り、一家を牛耳るのは彼女である」。p296

 オールコックは熱海に滞在中、買物で「店という店をみなからっぽにしてしまい、頭の混乱する店の主人たちと取り引きすることから生じるすべての楽しさを味わいつくした」。日本中どこでも男は計算がへただと彼は言っている。ところが「不思議なことに、女は主人よりはるかに計算が上手で」、足し算や掛け算をするとき、男たちは「かならず主婦の調法な才能にたよった」p296

 「女たちが商売の切り盛りになんとえらい働きをしているか見て、驚かされた」p296

 「うすのろ亭主が、われわれが買おうと思っている品物の値段について、女房の考えを聞かざるを得なかったことから、がみがみ女房といっしょになって、亭主をからかい、面白がって騒いでいる大勢の連中を店先でみたこともある。どの店でも、ほとんど女が台の所へ出てくる。何事であれ、女はしゃしゃり出るのだ」。p297

ガラス職人

 「こういった店の多くは女、つまり店主は妻によって切り廻されている。この細君たちはきわめてビジネスライクなのがしばしばだ。場合によっては、イージーゴーイングな亭主よりはるかにそうなのだ。彼女らの抜け目なさは予想できぬ形をとる。例えば、ある品物の値段が二十銭だと知って七つ買おうとすると、一円五十銭請求されてびっくりする。二十銭の七倍より十銭高い。最初は計算違いをしたなと思う。だが、そうではない。この頭の切れる女あきんどは、そんなへまをするような鈍物ではない。彼女は明らかに、需要が多いのなら値段の方も上げるべきだと考えているのだ」。p297

 ウェストンは「日本の農村の生活で最も重要な特徴として目につくのは、婦人が非常に重要な役割を演じていること」であり、「これらの有能で金のかからない働き手は、より保守的な上流階級の婦人たちが通常置かれている状態に比べれば、はるかに多くの自由を楽しみ、それ相応の考慮を払われている。農家の主婦は夫と労働を共にするだけでなく、その相談相手にもなる。主婦が一家の財布を預かり、実際に家庭を支配することが多い」p297

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 ジーボルト父子が鳴滝に居を構えて、村人に食事を振舞った際の模様だ。「婦人たちは全員揃って姿をみせた。すくなくとも年寄りのうちで来ないものはひとりもいなかった。彼女たちにはソバと魚をふるまった。さらに国内で広く飲まれている酒を燗して出した。しばらくすると女たちは“陽気に”なり、代表をよこして父に礼を述べ、父を腕で抱えあげかついで歩き回ろうとした。・・・・・田舎の人々の間ではほとんど常に一夫一婦制が広く行われているので、妻の座は、金持ちの町人あるいは貴族よりも良く、家庭内ではドイツの主婦とおなじような役割を演じている」。p297

 「日本の農民のあいだに、最も自由で独立心に富んだ女性を見出すことには何の疑いもない」p298

 「この階級では国内を通じて女性は、仕事はつらく楽しみは少ないけれど、頭を使う自立的な労働生活を送り、アメリカの女性の地位と同じように家庭内では尊重された地位を占めている彼女らの生活は、上流階級の婦人のそれより充実しており幸わせだ。何となれば、彼女ら自身が生活の糧の稼ぎ手であり、家族の収入の重要な部分をもたらしていて、彼女の言い分は通るし、敬意も払われるからだ」。p298

 「農民や商人の妻は、天皇の妻がそうであるよりずっと夫の地位に近いのだ」p299

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 「彼女たちは陽気で、純朴にして淑やか、生まれつき気品にあふれている」 

 落とされた眉とお歯黒は「それまでの虚栄心と享楽好みを完全に捨て去ったことの目に見える証し」

 妻が夫より利口な場合には、一家の財布を握り、一家を牛耳るのは彼女である
 
 男たちは「かならず主婦の調法な才能にたよった」

 農家の主婦は夫と労働を共にするだけでなく、その相談相手にもなる。

 家族の収入の重要な部分をもたらしていて、彼女の言い分は通るし、敬意も払われる



常に不思議なのは“働きたくない”スタートなこと。
キリスト教の考えで、「働く=罪」としてもさ、働かないで何するのかしら??ふしぎ~~。
上級・中級で足元や顔を気にしたり、そうするものだからと妻のすることをするの嫌だなあ。
下層でいい!いや、下層がいいわ。
大変な時代だなぁ。

女の位相②に続く。




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